オステオパシーとカイロプラクティックはどう違うのか
カイロプラクティックは1895年、アメリカの民間療法師、D・D・パーマー博士により創始された徒手医学です。日本には1916年ごろに伝わりました。
カイロプラクティックとは、骨盤や脊椎などの問題(サブラクセイション)を矯正し、神経の圧迫を取り除くことで様々な症状や痛み、不調を回復させる手技療法です。
ここまで書くと「オステオパシー」とどこが違うの?と思われるでしょうが、確かにその通りで、明確にその違いを説明できる人は少ないと思います。
良く聞くのは、『オステオパシーは身体全体を一つのユニットとして総合的に治療し、カイロプラクティックは背骨の歪みをメインに治療する』という説明です。
私はカイロプラクティックとオステオパシーの両方を学びましたが、骨格に対する直接的なテクニック(「オステオパシーの手技 直接法」参照)に関しましては、検査と手技もほぼ同じのため、一般の方が施術を受けてもその違いは分からないと思います。
しかし、 関節が動きやすい方向(ズレている方向)にもっていき制限を開放する間接的なテクニック(「オステオパシーの手技 間接法」参照)は、オステオパシー独特のものでカイロプラクティックにはありません。
また、四肢の関節可動性の細かい調整もオステオパシーならではかも知れません。
内臓に対しての施術は、オステオパシーでは、フランスのJ・ピエール・バラルDO MRO(F)が創始した『内臓マニピュレーション』というテクニックを使います。
これは、呼吸などにる臓器の他動的な動きと臓器自体の自発的な動きを、支持組織を介して直接的に調整するテクニックです。
カイロプラクティックでは、各臓器それぞれに関連する反射点を用いることが主のようです。
そしてオステオパシーの重要な項目として、硬膜や筋膜,、横隔膜や臓器同士を繋ぐ間膜などの“膜の軟らかい動き”と、脳脊髄液やリンパ液などの“体液循環”の調整を重視するということがあります。
頭蓋骨の可動性をしっかり調整するのもオステオパシーの大きな特徴です。
カイロプラクティックでは、歪みやズレによる神経圧迫などの“神経伝達異常”を重視し、それを正すことによって様々な症状が改善すると考えます。
しかし、カイロプラクティックも近年、頭蓋調整や四肢、神経受容器に直接刺激を与えるテクニックなど様々なものがあるようです。
「オステオパシー」「カイロプラクティック」とは、それぞれの哲学のこと
それぞれ多種多様のテクニックがありますが、 同じオステオパシーのテクニックでも考え方が少し異なるものや、オステオパシーとカイロプラクティックでも非常に近い理論と手技のテクニックがあり、各テクニックごとに説明するのはとても難しくなります。
オステオパシーとカイロプラクティックのドクター達が、それぞれ独自の臨床経験と研究を重ねて新しいテクニックを創始したので、同じオステオパシーでも理論や手技が異なってしまうのは当然でしょうし、オステオパシーとカイロプラクティックでもアプローチする対象が同じ(背骨、四肢など)であれば、それぞれのテクニックが類似してしまうのもまた当然なのかも知れません。
要は、「オステオパシー」「カイロプラクティック」とは哲学のことであり、テクニック(技法)の名称ではないのです。その哲学に基ついてそれぞれの各テクニックが考案され、その中で似かよったテクニックが存在するというのが私の見解です。
極端に言ってしまうと「オステオパシー」の哲学に基づいて行う手技はすべてオステオパシーであるし、「カイロプラクティック」の哲学に基づいて行う手技はすべてカイロプラクティックであると言っても間違いではありません。
いずれにせよ、症状の原因をみつけてそこにアプローチすることと、自然治癒力を高めるという部分では共通してますので、最終的に目指すところは一緒であり、どちらの方がより良いということは、私個人がどうこう言える問題ではありません。
どちらもアメリカで生まれた徒手医学で、それぞれD・O(ドクター・オブ・オステオパシー→オステオパシー医師免許)、D・C(ドクター・オブ・カイロプラクティック→カイロプラクティック国家資格)の称号を与えられ、医療として認められています。
残念ながら日本では未だどちらも医療として、また国家資格として認められていないところも共通しています。
もちろんカイロプラクティックもとても素晴らしい療法です。
私も2年制のカイロプラクティック専門学校でしっかりと学びました。
しかしその後、オステオパシーに出会い、その哲学と手技の素晴らしさにほれ込み、そしてより深く専門的に学び、現在はオステオパシーの手技をメインに施術を行っております。